Recalibration™
「何から?」
— 外部情報から、ご自分の感覚を大切に —
情報空間と身体感覚
— 外側へ向いた注意を、現在の身体へ戻す —
外部情報の多い時代に
現代の私たちは、多くの情報に囲まれて生活しています。
・スマートフォン。
・SNS。
・メール。
・ニュース。
・通知。
・他者からの評価や期待。
これらは、人とつながり、必要な情報を得て、生活を支える大切な仕組みです。
Recalibration™は、スマートフォンやSNSを悪いものとする考え方ではありません。
また、外部情報が多いことを、身体の不調や病気の原因として説明するものでもありません。
ただ、次々と変化する画面や情報へ注意を向けているうちに、ご自身の視線や姿勢、足元の感覚へ注意を向ける時間が少なくなっていることに、ふと気づく場合があります。
前頁では、外部から届く情報、周囲からの期待や評価などが、ご自身の感じ方に影響する可能性を、説明の便宜上「外部バイアス」と呼びました。
これは医学的な診断名や、確立した心理学的分類ではありません。
外側から届く情報を否定するための言葉でもありません。
ご自身の注意が今どこへ向いているのかを考えるための、一つの補助的な表現です。
画面から、現在の身体へ
外部とのつながりを断つ必要はありません。
すべての情報を遮断したり、特別な場所へ移動したりする必要もありません。
安全な場所で安定した椅子に腰掛け、ほんの短い時間だけ画面から目を離してみます。
無理なく正面を向いたときの、ほぼ目の高さにある一点へ視線を置きます。
強く凝視する必要はありません。
同時に、
・足裏や踵が床に触れている感覚。
・身体が椅子に触れている感覚。
・今の姿勢をどのように感じているか。
に、静かに注意を向けてみます。
姿勢を正そうとする必要はありません。
左右をそろえたり、何らかの変化を起こしたりする必要もありません。
特に何も感じなかったとしても、観察が失敗したわけではありません。
外側へ向いていた注意を、ご自身が今いる場所と身体へ、短い時間だけ戻してみる。
ここで行うのは、そのための小さな観察です。
外側の動きを止めるのではなく、追い続けることを休む
外側から届く情報は、変化し続けます。
新しい通知が届き、話題が移り、他者の反応や評価も変わります。
Recalibration™は、それらの変化を止めるものではありません。
社会や情報環境を、ご自身の都合に合わせて静止させようとするものでもありません。
変化している外側の情報をすべて追い続けることを、いったん休んでみます。
そして、ご自身が今どこを見ているのか。
足元や椅子との接触を、どのように感じているのか。
現在の身体を、どのように受け止めているのか。
を静かに確かめます。
ここでいう「外側の動き」や「揺れ」は、情報環境を表すための比喩です。
医学的なめまいの原因や病態を説明する言葉ではありません。
この考え方が、後の頁でご説明する、
「揺れを追うのではなく、支点を自分の正面で見る」
という比喩へつながります。
日常の観察例――足を組んでいることに気づく
人が椅子に座って足を組む理由は、一つには定まりません。
習慣によることもあります。
椅子や机の高さ、衣服、関節の動かしやすさ、そのときの疲労など、さまざまな要因が関係し得ます。
姿勢だけから、その方の心理状態や、足を組んだ理由を判断することはできません。
Recalibration™では、足を組むことを、直ちに良い姿勢とも悪い姿勢とも決めません。
足を組んでいることに気づいたら、まずは無理に直さず、その姿勢のままで短い時間、次のことを確かめてみます。
・左右の臀部は、椅子へどのように触れているか。
・両足や踵は、床や椅子へどのように触れているか。
・身体の左右に、何か違いを感じるか。
・窮屈さ、安定感、重み、しびれなどを感じるか。
・あるいは、特に何も感じないか。
次に、安全に行える場合には、ゆっくりと脚をほどき、両足を無理なく床へ置いてみます。
そのとき、
・足裏や踵の接地感。
・座面との接触。
・身体の左右での感じ方。
に何か変化があるかを確かめます。
ほとんど違いを感じないこともあります。
違いを感じることもあります。
その僅かな違い、床に点いた踵からの圧力に
ふと、やすらぎ、安定感を感じてみた
ことはありませんか。
足を組んだ姿勢と、両足を床へ置いた姿勢の、どちらかを正しいと決める必要はありません。
また、感じ方の違いから、特定の心理的意味、神経生理学的な仕組み、病気の有無または症状の原因を推定するものでもありません。
両足を床へ置くことで、症状や身体機能が改善すると説明するものでもありません。
大切なのは、普段は意識していなかった姿勢に気づき、身体が椅子や床とどのように接していると感じられるかを、ご自身で確かめてみることです。
痛み、しびれ、めまい、ふらつき、不快感が生じた場合には、観察を中止してください。
日常の感覚を、結論にしない
Recalibration™では、日常の何気ない姿勢や身体感覚を、直ちに異常の証拠とは考えません。
一方、ご自身が何かを感じていることを、最初から意味のないものとして切り捨てる必要もありません。
異常と決めつけないこと。
しかし、感じていることを「何もない」ともしないこと。
判断を急がず、現在のご自身の経験として確かめてみること。
それが、この頁でご案内する身体観察です。
本頁は、スマートフォン、SNS、情報過多、または足を組む姿勢が、PPPDその他の病気を引き起こすと説明するものではありません。
次頁では、このような日常の比喩や観察とは区別して、医学的な診断概念であるPPPDを手がかりに、視覚、前庭感覚、体性感覚などの「感覚の重みづけ」と姿勢制御について考えます。