Recalibration™
「どこで?」
Recalibration tunes presence.
— 東京国立科学博物館で —
フーコーの振り子を手がかりに
— 揺れを追うのではなく、正面と足元へ戻る —
比喩としてのフーコーの振り子
前頁では、PPPDという医学的な診断概念を手がかりに、視覚、前庭感覚、体性感覚などが、姿勢や安定感にどのように関わっているのかを考えました。
ここからは、医学的な診断や病態の説明からいったん離れ、Recalibration™の考え方を表す一つの比喩についてご説明します。
その比喩が、フーコーの振り子です。
ここでフーコーの振り子を取り上げるのは、PPPDその他のめまいの原因や仕組みを説明するためではありません。
また、振り子を見ることを、観察方法や治療として勧めるものでもありません。
外側で動いているものだけを追い続けず、観察しているご自身の現在地にも注意を戻すという考えを表すための比喩です。
フーコーの振り子は、地球が自転していることを目に見える形で示す装置です。
振り子は同じ方向へ往復しているように見えますが、地表から観察すると、その振動面の向きが時間とともに少しずつ変化して見えます。
その見かけの変化の速さは、観察する場所の緯度によって異なります。
Recalibration™の発想の一つの原点となったのは、提唱者が東京・上野の国立科学博物館で目にしたフーコーの振り子でした。国立科学博物館では、現在も日本館1階にフーコーの振り子が展示されています。
観察している側も動いている
フーコーの振り子が示しているのは、目の前の振り子の動きだけではありません。
振り子を観察している私たちの足元にある地球も、自転しています。
私たちは、静止した場所から動く対象を見ているつもりでも、観察している側も動いています。
どこから見ているかによって、変化の見え方は異なります。
Recalibration™は、この物理現象を、そのまま人の身体や症状へ当てはめるものではありません。
ただ、
見えている対象だけでなく、見ているご自身の側にも注意を戻してみる
という視点を、フーコーの振り子から借りています。
振り子の動きを追い続けていると、注意は自然に、動いている錘の方へ向かいます。
同じように、次々に変化する画面、情報、周囲の反応を追い続けているとき、注意が外側へ向き続けていることがあります。
Recalibration™は、外側の動きを止めようとするものではありません。
外側を追い続けることを、ほんの短い時間だけ休み、ご自身が今どこを見て、足元をどのように感じているかを確かめてみます。
「支点を自分の正面で見る」という比喩
実際の振り子には、天井から吊られた物理的な支点があります。
しかし、Recalibration™でいう、
「支点を自分の正面で見る」
とは、その天井の支点を見上げることではありません。
ご自身が自然に正面を向いたときの、ほぼ目の高さにある一点へ、無理なく視線を置きます。
同時に、足裏や踵が床または地面に触れている感覚を確かめます。
・正面への視線。
・足元の接地感。
この二つを手がかりに、ご自身が今どこにいて、身体をどのように感じているのかへ、静かに注意を戻します。
ここでいう「支点」は、身体の中にある特定の解剖学的な一点ではありません。
また、外の世界に存在する、絶対に動かない一点でもありません。
正面への視線と足元の接地感を通じて、現在のご自身の身体感覚を確かめるための比喩です。
一点を強く凝視したり、長時間見続けたりする必要はありません。
天井や高い位置を見上げる必要もありません。
何らかの変化が起こるまで繰り返すものでもありません。
外側の動きを止めるのではなく、動きを追い続けることをいったん休み、正面と足元へ注意を戻してみる。
その意味を、Recalibration™では、
「支点を自分の正面で見る」
という言葉で表しています。
次頁では、実際の振り子の支点も、より大きな視点から見れば完全に静止しているわけではないことを手がかりに、「支点の相対性」について考えます。