Recalibration™

「何を?」

— ご自分の感覚を大切に —

臨床経験から生まれた視点

— 小さな違いと、見方に加わる影響を、決めつけずに見直す —

この頁の位置づけ

一般に共有されている知見

人の姿勢制御には、視覚、前庭感覚、足裏・筋肉・関節などからの体性感覚が関わっています。
これらの感覚情報は、常に同じ割合で利用されるわけではなく、周囲の明るさ、足元の状態、身体の動きなどに応じて、利用のされ方が変化します。

臨床経験から生じた問い

画像検査や神経学的診察によって明らかな病変を見つけることは、医療において極めて重要です。
その一方で、明確な病変の有無だけでは、ご本人が感じている不調や身体感覚のすべてを説明しきれないことがあります。
小さな左右差や見え方の違いを、直ちに病気とするのでも、「意味がない」と切り捨てるのでもなく、どのように受け止めるべきか。
Recalibration™は、この臨床上の問いから生まれました。

Recalibration™における比喩

正面への視線と足元の接地感を通じて、現在の身体感覚を確かめることを、Recalibration™では、
「支点を自分の正面で見る」
という比喩で表しています。
これは、特定の解剖学的な一点を示す言葉ではありません。
この比喩については、第10頁と第11頁で詳しくご説明します。

現在検討中の作業仮説

舌写真の見え方、身体感覚の左右差、頭蓋と第2頸椎との位置関係などを、研究上の観察項目として検討しています。
これらの間に関連または因果関係があるか、どのような臨床的意味があり得るか、また、何らかの観察や支援に有用であるかは、現時点では確立していません。
医学的に確立した診断法、治療法または評価法として提示するものではありません。

完全な左右対称を前提にしない

Recalibration™は、完全に整っているもの、完全にまっすぐに見えるものだけを、身体の正しい状態とする考え方ではありません。
しかし同時に、少し曲がって見えることや、左右で違って見えることのすべてに、特別な意味があると考えるものでもありません。

舌の写真が、予想していたとおりに見えることがあります。
少し違って見えることもあります。
特に何も気づかないこともあります。

大切なのは、左右差を探し出すことではありません。
何かに気づいたとしても、その気づきを直ちに病気、異常または症状の原因という結論にしないことです。

小さな違いを、異常の証拠にも、「何もない」ことの証拠にも、すぐにはしない。
Recalibration™は、そのような姿勢から始まります。

長年の臨床経験から残った問い

この考え方の背景には、提唱者が脳神経外科医として長年積み重ねてきた臨床経験があります。
臨床では、明らかな神経学的異常や画像上の病変を見逃さず、必要な診断と治療につなげることが何より重要です。

その一方で、多くの患者さんと向き合う中で、単独では病的意味を確定できない小さな違いや、ご本人が感じているにもかかわらず、検査所見だけでは十分に表現しにくい不調に出会うことがあります。

そのような違いを、新たな病気として安易に分類するべきではありません。
しかし、医学的な異常を確定できないという理由だけで、ご本人が感じていることまで存在しないと考えることも適切ではありません。

この間を、どのように考えるか。
観察したことを、どのように臨床上の問いとして保持するか。
その問題意識が、Recalibration™の出発点の一つとなりました。

舌の見え方、口腔周囲の見え方、姿勢、身体の左右での感じ方などは、現時点では、それぞれ単独で診断や原因の判定に用いるものではありません。
それらは、まず観察し、問いを立てるための手がかりとして扱います。

外側と内側の、どちらか一方で説明を終わりにしない = ”閉じない”

体調が優れないとき、その状態を「ストレスのため」と説明することがあります。
外部環境や心理社会的な負担が心身に影響することはあり、「ストレス」という説明が有用な場合もあります。
しかし、その一語だけで説明を終えると、現在の身体状態や、そのほかの要因を見落とす場合があります。

反対に、不調の原因をすべてご自身の内側に求め、ご自身だけに責任を負わせる必要もありません。

Recalibration™では、説明の便宜上、

・外部から届く情報、環境、他者からの評価や期待などによる影響を「外部バイアス」

・過去の経験、予測、不安、先入観、注意の向け方などによる影響を「内部バイアス」

と呼ぶことがあります。
これらは、医学的な診断名や、確立した臨床分類ではありません。
また、外部と内部を、明確に二分できるという意味でもありません。

外側から受け取った情報は、ご自身の経験を通して解釈されます。
ご自身の予測や不安によって、外側の情報の受け取り方が変わることもあります。
外部と内部は、互いに影響し合っています。

Recalibration™は、外部環境だけに原因を求めるものでも、ご自身の内面だけに原因を求めるものでもありません。
一つの説明で結論を閉じる前に、現在ご自身が何を感じているのかを、静かに確かめることを大切にします。

異常とも、「何もない」とも急いで決めない

小さな違いや左右差が見えたとしても、それだけで病気や異常とは判断できません。
一方、ご自身が不調や違和感を感じているのに、

「検査で異常がなかったから、何もない」

「気のせいだから、考えなくてよい」

と切り捨てる必要もありません。

必要な医学的評価を受けること。
その結果を尊重すること。
利益や利便だけでなく、ご自身が感じていることも、現在の経験として受け止めること。
これらは、互いに矛盾するものではありません。

Recalibration™は、医学的に説明されていない部分へ、独自の診断名を与えるものではありません。
また、ご本人が感じていることを否定するものでもありません。

判断を急がず、前頁でご案内した正面への視線と足元の接地感を一つの手がかりとして、現在の身体感覚へ注意を戻してみます。

何かを直そうとする前に、今どのように感じているのかを確かめる。
それが、この頁でいう「急がない」という姿勢です。